沖縄の美術館で「生と死」「苦悩と救済」「人間と戦争」を想う
1994年11月23日に沖縄で初めての個人美術館として開館し、皆さまのお支えで30周年を迎えることができました。 本当にありがとうございます。
長年の感謝を込めて、開館記念日の11月23日(土)は一日入館料を無料とさせていただきます。
(個人での入館に限ります。特別イベントはございません)
『沖縄戦の図』は、現場に置きたいと望まれた丸木位里・丸木俊夫妻と、この沖縄に「静かにもの想う場」をつくりたいという私の願いが一つになり、美術館の建設が10年の歳月をかけて実現しました。1994年11月23日に開館すると、絵のために証言し、モデルになった人たちがたくさん来館してくださり、「私はこのモデルになりました」と指さしながら自らの体験談をたっぷり話してくれました。50年前の戦争体験を昨日の出来事のように話す人たちの、からだの奥に深々と刻まれた「沖縄の記憶」の確かさに私は驚きました。そして巨大な絵の前で沖縄戦を生き抜いた人びとは、たくさんの事柄を思い出して、いろんなことを教えてくれました。私たちスタッフはそのことによってずいぶんと育てられました。かけがえのない有難い時間でした。
「『原爆の図』を描き、『南京大虐殺の図』を描き、『アウシュビッツ』を描いてきましたが、『沖縄戦の図』を描くことが一番戦争を描くことになります。」と位里さんはおっしゃっていますが、それぞれの制作過程で人間の奥深くまで考え抜いて、制作に勤しんだ丸木夫妻の思考の集大成の作品が『沖縄戦の図』14部です。
混迷を深める世界のいま「命どぅ宝(ヌチドゥタカラ)」の思想は、ますます重要になってきたのではないでしょうか。
沖縄の土地に根を張ることを目標にした一歩一歩の30年でした。
この機会に足をお運びいただけますと幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
佐喜眞美術館
館長 佐喜眞道夫
スタッフ一同
©國吉和夫